簿記論の答練は毎回40点台で、模試の判定はE。独学2年目の秋、田中さん(36歳・建設会社の経理担当)は結果表を前に「このやり方のままでは一生受からない」と感じたという。税理士試験は5科目の合格が必要な長期戦で、独学を続けるか通信講座に切り替えるかで、合格までの年数が数年単位で変わることもある。
※本記事で紹介する田中さん(仮名)の体験は、複数の税理士試験受験者の声をもとに構成した架空のケースです。学習期間や教材、点数などは典型的な事例として再構成しています。
この記事では、2027年8月試験に向けた税理士の通信講座から、社会人におすすめの6社を料金・給付金・サポートの3軸で比較する。料金はすべて2026年10月時点で各社の公式サイトに表示されていた税込価格で、キャンペーンによって変動する。8月の本試験を終えて11月27日の合格発表を待つ人にも役立つよう、申し込みのタイミングまで掘り下げた。
税理士試験の現実と通信講座がおすすめな理由

国税庁が公表した令和7年度(第75回)税理士試験結果では、簿記論の合格率が11.1%(受験者18,466人・合格者2,058人)だった。財務諸表論は31.9%(受験者15,629人・合格者4,980人)だった。前年の令和6年度は簿記論17.4%、財務諸表論8.0%で、同じ科目でも年度によって難易度が大きく振れる。5科目を揃えた到達者は527人で、受験者全体(実人員36,320人)の約1.5%にとどまる。
会計科目の簿記論・財務諸表論は令和5年度試験から受験資格が不要になり、簿記2級を持つ社会人がすぐに挑戦できるようになった。一方で理論暗記と計算演習を並行させる必要があり、配点の重い総合問題への対応は独学だと後手に回りやすい。税理士の通信講座がおすすめなのは、出題傾向に沿ったカリキュラムと答練が用意され、どこで失点しているかを第三者の目で可視化できるからだ。
令和8年度(第76回)試験は2026年8月4日〜6日に実施済みで、合格発表は11月27日に予定されている。この回からは、これまで得点が通知されなかった科目合格者を含む全受験者に、各科目の得点が通知されるようになった。不合格だった場合も合格ラインとの距離が数字で分かるため、次年度の税理士講座でどのコースを選ぶかを判断しやすくなる。
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税理士通信講座おすすめ6社の料金比較【2027年合格目標】

下の表は、2027年8月試験を目標とする簿記論・財務諸表論の通信コースを、税理士の通信講座で受講者の多い6社について並べたものだ。金額は各社公式サイトに2026年10月時点で表示されていた税込価格で、割引キャンペーンや入会金の有無によって実際の支払額は変わる。
| 講座 | 簿財の主なコース | 受講料(税込) | 教育訓練給付 | 質問・サポート |
|---|---|---|---|---|
| スタディング | 簿財2科目セット | 59,800円〜99,800円 | 給付対象の特別版あり | AI質問24時間・講師質問はチケット制 |
| 資格の大原 | 初学者一発合格パック(Web通信) | 398,000円+入学金6,000円 | 対象コースあり | Web質問45回・電話や来校での質問・自習室 |
| TAC | 基礎マスター+上級コース(Web通信) | 1科目240,000円+入会金10,000円 | 対象 | 回数制の質問メール・質問電話・自習室 |
| ネットスクール/アガルート | 簿財一括標準コース | 201,700円 | 対象 | ライブ講義・答練の個別添削 |
| クレアール | 簿財アドバンスレギュラーコース | 255,000円(10月割引価格168,300円) | 講座ページに記載なし | Web講義・月替わりの割引制度 |
| LEC | 簿財横断プレミアムコース(Web) | 272,800円 | 公式で要確認 | メール質問「教えてチューター」 |
ネットスクールとアガルートは同じ税理士通信講座の販売窓口違い
比較記事によってはネットスクールとアガルートが別々の税理士講座として並んでいるが、アガルートの税理士講座はネットスクール株式会社が提供している。簿財一括標準コースの受講料は両社とも201,700円(教材別なら178,200円)で、ライブ講義や答練添削といった基本の仕組みも共通だ。アガルート側には毎月のオンライン個別カウンセリングと、簿記初学者向けの「ゼロ標準コース」(210,000円)が用意されている。面談での伴走を重視するならアガルート経由、ネットスクールの再受講割引を活用したいなら直接申し込む、と考えると選びやすい。
給付金と入会金を含めた実質負担
一般教育訓練給付制度の対象コースを修了すると、受講料の20%(上限10万円)がハローワークから支給される。ネットスクールの簿財一括標準コース201,700円なら給付額は40,340円で、実質負担は161,360円になる。大原の初学者一発合格パック398,000円は給付額79,600円で、入学金6,000円を加えた実質負担は324,400円だ。TACの基礎マスター+上級コースは1科目240,000円に対して給付額48,000円となり、入会金10,000円は初回のみかかる。
給付金は申込時に対象コースを選び、修了要件を満たして初めて受け取れる。アガルートでは簿記論標準コース単体が対象外になるなど、同じ講座でもコースによって扱いが異なるため、申込前に各社の給付金案内で確かめておきたい。雇用保険の加入期間など本人側の条件もあるので、会社員なら勤務先を通じて加入状況を確認しておくと手続きがスムーズだ。
税理士通信講座おすすめ6社の特徴とおすすめな人
スタディング|費用を抑えてスマホで学びたい人におすすめ
スタディングの税理士通信講座は、簿財2科目セットがミニマム59,800円・アドバンス74,800円・フル99,800円の3段階だ。今回の6社の中で最も受講料が低い。AIへの質問は24時間いつでもでき、講師への質問はQ&Aチケット制(ミニマム3枚・アドバンス10枚・フル30枚)で枚数に上限がある。紙のテキストはミニマムとアドバンスでは別売のため、冊子で学びたい人はフルパックを選ぶか、オプション代を含めて比べたい。通勤時間に講義動画を見て、休日に問題演習をまとめて解く社会人に特におすすめしたい。
資格の大原|学習計画を講座に任せたい人におすすめ
大原の税理士講座は、2025年度の官報合格者に占める大原生を256名・占有率48.5%と公表している。9月開講の簿記・財表初学者一発合格パック(Web通信)は398,000円と6社で最も高いが、Web質問45回に加えて電話や来校での質問にも対応する。単科で申し込む場合は簿記論・財務諸表論が各232,000円(Web通信)で、講義なしの資料通信なら各156,000円まで下がる。学習スケジュールを講座に任せ、質問の窓口を多く持ちたい人には特におすすめの税理士通信講座だ。
TAC|質問電話や自習室も使いたい人におすすめ
TACの税理士講座は2025年度の官報合格者が148名だった。簿財のカリキュラム修了者では簿記論682名中258名、財務諸表論680名中507名が合格したと公表している。8月・9月入学の基礎マスター+上級コース(Web通信)は教材費込みで1科目240,000円となり、入会金10,000円が加わる。2科目を同時に学ぶなら1年簿財パック(410,000円)もあり、入会金の扱いはTACの公式案内で確認したい。質問メールは時期ごとに回数の上限があるが、平日21時までの質問電話や校舎の自習室を通信生も使える。近くに校舎がある人には、通信講座でも校舎の設備を活用できる点がおすすめの理由になる。
ネットスクール/アガルート|ライブ講義や面談の伴走がほしい人におすすめ
ネットスクールの税理士通信講座はライブ講義を配信し、終了の翌日からはオンデマンドで視聴できる。確認テストや直前答練は講師が個別に添削し、受講生専用SNS「学び舎」で講師や他の受講生に質問できる。翌年度に再受講する場合は受講料が半額相当になる制度があり、科目合格制の長期戦では見逃せないおすすめポイントだ。アガルート経由なら毎月のオンライン個別カウンセリングが加わるため、計画の立て方そのものに不安がある人に向く。
クレアール|割引期間を狙って費用を抑えたい人におすすめ
クレアールの税理士通信講座では、2027年合格目標の簿財アドバンスレギュラーコースが一般価格255,000円となっている。2026年10月の割引価格は168,300円で、入学金と教材費、消費税がすべて含まれる。単科のレギュラーコースも一般価格196,000円が割引で129,360円になっている。割引価格は月ごとに切り替わるため、検討する時期によって総額が動く点は覚えておきたい。合格率や給付金の対象かどうかは講座ページで確認できなかったので、資料請求の際に問い合わせるのが確実だ。
LEC|簿財を横断的に学びたい人におすすめ
LECの税理士通信講座「簿財横断プレミアムコース」(全104回)はWeb受講で272,800円、エッセンスコース(全100回)は248,600円だ。簿記論と財務諸表論の共通論点をまとめて学ぶ設計で、2科目同時受験を前提にした人に合う。他校の受講経験者は15%、国家資格などの有資格者は10%割り引く制度があり、独学や他校から乗り換える人は一般価格より安く申し込める。質問は24時間受け付けのメール「教えてチューター」で行い、回答まで5〜10日程度かかる場合がある。
目的別に選ぶ税理士通信講座のおすすめ
受講料を最優先するならおすすめは2択
税理士の通信講座で受講料を最優先するなら、簿財2科目で10万円を切るスタディングがおすすめだ。紙の教材や講師への質問を増やしたい場合は、10月割引で簿財アドバンスが168,300円になるクレアールも候補に入る。どちらも給付金の扱いは講座ページだけでは判断しきれないため、税理士講座の資料請求時に対象コースかどうかを確認しておきたい。
独学で一度つまずいた人へのおすすめ
独学で本試験を受けて不合格だった人には、答練の添削や面談で弱点を指摘してもらえる税理士の通信講座がおすすめだ。ネットスクールは答練を講師が個別に添削し、アガルート経由なら毎月の個別カウンセリングで学習計画まで見直せる。田中さんのように「どこを優先すべきか分からない」状態で伸び悩んでいるなら、教材の量よりもフィードバックの仕組みで比べたほうが失敗しにくい。
実績と質問窓口を重視する人へのおすすめ
受講料が高くても実績と質問のしやすさを優先したい人には、大原とTACの税理士通信講座がおすすめできる。両校は官報合格者の人数を公表しており、電話での質問や自習室など、通信講座でありながら通学に近いサポートを受けられる。働きながら長期戦になる税理士試験では、迷ったときにすぐ質問できる環境が継続の支えになる。
合格実績の数字は「数え方」をそろえて比較する
税理士の通信講座各社が公表する合格実績は数え方がばらばらで、単純には比べられない。大原の「官報合格占有率48.5%」は、5科目を揃えた527人のうち大原生が何人いたかを示す数字だ。TACの「官報合格者148名」も同じ母集団で、527人で割るとおよそ28%になる。どちらも5科目合格者の数なので、簿財だけを受ける人にとっては講座の総合力を示す参考値と考えたほうがよい。
スタディングの「2025年度科目合格者676名」は延べ人数で、同じ人が2科目に合格すれば2名と数える。カリキュラム修了者合格率の簿記論41.5%・財務諸表論77.7%は、答練を80%以上こなし、最終答練で60点以上を取った受講生だけを対象にした数字だ。TACも簿財の修了者に限った合格者数を公表しており、修了まで走り切れば合格率が大きく上がることを示している。ネットスクール、アガルート、クレアール、LECは合格者の人数や合格率を講座ページで公表していなかった。
数字の大小よりも、母集団が「5科目合格者」「科目合格者の延べ人数」「修了者のみ」のどれなのかを見るのが失敗しない読み方だ。国税庁の全体合格率(簿記論11.1%)と講座の修了者合格率を並べると差が大きく見えるが、修了者は途中で離脱しなかった受講生に限られる。税理士の通信講座選びでは、自分が最後までカリキュラムを走り切れる仕組みがあるかどうかを重視するのがおすすめだ。
簿記2級・独学経験者が税理士講座を選ぶ判断軸
初学者向けコースか上級コースか
税理士の通信講座各社の初学者向けコースは、簿記の基礎から段階的に積み上げる設計が多く、簿記2級の合格者には序盤が復習になる。アガルートのゼロ標準コースのように簿記に触れたことがない人向けのコースもあるが、2級合格者なら標準コースで足りるケースが多い。独学で一度本試験を受けた人は、得点通知で合格ラインとの差を確認してから決めたい。基礎論点の理解に不安が残るなら初学者向け、計算スピードや理論の精度が課題なら答練中心の上級コースがおすすめだ。
本試験後〜11月27日の合格発表前に申し込むか
2027年8月試験に向けた初学者コースの多くは8月〜9月に開講しており、10月の時点ですでに講義が進んでいる。合格発表の11月27日まで待つと、1年間の学習期間が3か月近く短くなる計算だ。手応えが厳しかった科目は不合格を前提に講座を決め、合格していた場合の扱いを申込前に確認しておくと無駄が少ない。アガルートの科目振替制度や、ネットスクールの再受講割引、LECの再受講30%割引は、受講後の変更や再挑戦を想定した仕組みだ。こうした制度がある税理士の通信講座を選ぶと、発表前に申し込むリスクを抑えられるのでおすすめだ。
独学2年の挫折から通信講座で簿財同時合格するまで

建設会社で経理を担当していた田中さん(36歳、仮名)は、簿記2級に合格した翌年から独学で簿記論・財務諸表論に挑戦した。市販のテキストと問題集だけで2年間取り組んだが、簿記論の答練は40点台から抜け出せず、模試はどちらの年もE判定で本試験も不合格だった。理論暗記に時間をかけすぎて計算演習が足りず、どの論点を優先すべきか自分で判断できなかったことが敗因だったという。
3年目に税理士の通信講座であるスタディングの簿財2科目セットへ切り替え、平日は往復70分の通勤電車で講義動画を視聴し、昼休みの20分を理論暗記に充てた。休日は4時間を確保して総合問題を時間を計って解き、間違えた論点だけを講義で見直す流れに変えた。答練の点数は切り替え直後の48点から3か月後には62点に上がり、直前期の最終答練では71点まで伸びた。
総学習時間は独学期間を含めて約1,800時間。3年目の本試験で簿記論と財務諸表論に同時合格し、翌年には会計事務所へ転職して年収が約50万円上がった。「独学の2年間も無駄ではなかったが、講座が論点の優先順位を整理してくれたことで初めて点数が伸び始めた」と振り返る。今は法人税法の学習を続けながら、実務と試験勉強を並行させている。
税理士の通信講座に関するよくある質問
働きながらでも税理士試験に合格できますか
可能だが、科目合格制を前提にした年単位の計画が欠かせない。会計科目の簿財を1年目に同時に狙い、2年目以降に税法科目を1科目ずつ積み上げるのが社会人に多いパターンだ。5科目そろうまでに5〜8年かかる人も珍しくないため、平日と休日の学習時間を先に確保してから講座を選ぶのがおすすめだ。
独学と通信講座、結局どちらが安いですか
教材費だけを比べれば独学のほうが安い。ただし不合格で受験年数が延びると、受験料や昇給・転職の機会損失まで含めた総コストが通信講座の受講料を上回ることがある。給付金を使えば受講料の20%が戻るため、対象の税理士通信講座を選んだうえで比べると判断しやすい。
税理士試験の科目合格に有効期限はありますか
ない。一度合格した科目は生涯有効で、働きながら数年かけて5科目を積み上げる受験計画が成り立つ。受験資格や試験制度の最新情報は、国税庁の税理士試験ページで確認できる。
簿財セットと1科目ずつ、どちらで申し込むべきですか
簿記論と財務諸表論は会計基準や仕訳の論点が重なるため、同時に学ぶと効率がよい。税理士の通信講座では多くが簿財セットを用意しており、平日も毎日学習時間を確保できるならセット申込がおすすめだ。繁忙期が長く時間が読めないなら、簿記論だけ先に申し込み財務諸表論は翌年に回す進め方もある。
あわせて読みたい税理士試験、本当にそんなに難しい?科目別合格率税理士試験の難易度と科目別合格率を徹底解説しています
まとめ
税理士の通信講座は、費用・合格実績・サポートのどれを優先するかでおすすめの講座が変わる。費用を抑えたい人におすすめなのはスタディングだ。質問窓口の多さや自習室を重視するなら資格の大原やTAC、ライブ講義や個別面談の伴走を求めるならネットスクールかアガルートが候補になる。どの講座も給付金や割引の条件で実質負担が数万円単位で変わるため、申込前に公式の案内で対象コースを確認しておきたい。
試験制度や受験資格は国税庁の税理士試験ページで確認できる。講座の最新料金はスタディング、資格の大原、TACの公式サイトでチェックしたい。無料の資料請求やサンプル講義で、自分の生活リズムに合うおすすめの税理士講座かを確かめてから申し込もう。