社労士の年収は?勤務・開業別の実態と収入を上げる方法

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「社労士に合格したら、年収はどれくらい上がるのだろう」。人事や総務で給与計算を担当していると、一度はそう考えるのではないでしょうか。800〜1,000時間ともいわれる勉強時間を投じる以上、見返りの大きさを知りたいのは自然なことです。ところがネットで調べると「平均500万円」「1,000万円超」と数字がばらばらで、かえって判断に迷ってしまいます。

この記事では、全国社会保険労務士会連合会が2024年度に実施した実態調査をもとに、勤務・開業それぞれの年収を整理します。数字がばらつく理由や開業時の売上と手取りの違い、年収を上げる具体的なルートまで紹介します。給与計算担当から社労士になった森田さんの体験も交えて見ていきましょう。

※ここで紹介する森田さんの体験は、複数の社労士合格者の声をもとに構成した架空のケースです。

社労士の年収は「働き方」で大きく変わる

financial report documents on office desk

公的な「社労士の平均年収」は存在しない

まず押さえておきたいのは、国の統計に社労士だけの平均年収は存在しないという点です。厚生労働省の賃金構造基本統計調査には、この資格単独の職種区分がありません。2019年分の同調査をもとにした推計では約460万円とされていましたが、最新データでは同じ方法で算出できなくなっています。

厚生労働省の職業情報提供サイトjob tagでは、該当職業のページに1,000万円を超える年収が表示されています。ただしこれは、社労士を含む「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」全体の数値です。ネット上で年収の数字が大きくぶれるのは、こうした集計範囲の違いが主な原因です。

勤務社労士の年収は300万〜600万円台が最多

実態に近いデータとして参考になるのが、全国社会保険労務士会連合会が2024年度に全登録者を対象に行った実態調査です。登録区分の内訳は、開業が51.4%、社労士法人の社員が8.6%、企業などに勤める勤務等が40.0%でした。勤務等の約74%は一般企業で働いており、事務所勤務は約26%にとどまります。

勤務者の年収分布を見ると、最も多いのは「300万円以上600万円未満」で38.0%でした。一方で600万円以上の層も合計41.5%を占め、そのうち900万円以上が16.5%います。勤務者の年収は、資格そのものよりも勤務先の企業規模や役職に左右されやすいといえます。

開業社労士は「売上」と「所得」を分けて見る

開業者の調査結果は、年収ではなく事務所の年間売上で集計されています。売上の中央値は500万円台にとどまる一方、平均値は1,000万円を大きく上回ります。平均と中央値の差が大きいのは、売上数千万円規模の一部の事務所が平均を押し上げているためです。

注意したいのは、売上がそのまま手元に残るわけではない点です。事務所家賃や人件費、給与計算システムの利用料、都道府県会の会費などを差し引いた残りが実際の所得になります。開業直後は顧問先が少なく、売上300万円未満でスタートする人も珍しくありません。

勤務・法人社員・開業の年収と働き方を比較

3つの働き方を、年収の目安と特徴で比べると次のとおりです。年収レンジは実態調査の分布と求人情報をもとにした目安で、地域や経験年数によって上下します。

働き方 年収の目安 収入の安定性 年収を伸ばす主な要因
勤務社労士(一般企業) 400万〜700万円 高い(給与制) 昇進・管理職登用・資格手当
勤務社労士(社労士事務所) 300万〜500万円 高い(給与制) 担当顧問先の増加・幹部登用
社労士法人の社員 500万〜1,000万円 法人の業績に連動 出資比率・担当部門の規模
開業社労士 200万〜1,500万円以上 顧問先の数しだい 顧問先の数と単価・専門分野

勤務の場合は年収の上限こそ見えやすいものの、毎月の給与が保証される安心感があります。開業すると収入の幅が極端に広くなり、顧問先を30社以上抱えて年収1,000万円を超える人もいれば、副業程度の収入にとどまる人もいます。どちらが自分に合うかは、収入の安定と上限の高さのどちらを重視するかで決まります。

開業社労士の収入シミュレーション(顧問料×顧問先数)

consultant meeting small business owner

開業後の収入の柱は、企業と結ぶ顧問契約です。顧問料は従業員規模によって変わり、従業員10人前後の会社で月2万〜3万円、50人規模で月4万〜6万円がひとつの目安です。ここに給与計算の代行や就業規則の作成、助成金申請といったスポット業務の報酬が上乗せされます。

  • 顧問先10社×月2.5万円=年間売上300万円(開業2〜3年目に多い水準)
  • 顧問先20社×月3万円+スポット業務100万円=年間売上820万円
  • 顧問先35社×月3.5万円+スポット業務300万円=年間売上1,770万円(補助スタッフ1〜2名を雇用)

売上から経費を引いた所得は、ひとり事務所なら売上の6〜7割程度が目安です。スタッフを雇えば売上は伸びますが、人件費で利益率は下がります。年収1,000万円を手元に残すには、売上1,500万円前後を見込むのが現実的です。顧問先を1社ずつ積み上げる仕事なので、開業から軌道に乗るまで3〜5年かかるケースが一般的です。

社労士が年収を上げる4つのルート

企業内で人事・労務のスペシャリストになる

企業勤めのまま年収を上げる王道は、人事・労務部門で専門性を武器に昇進することです。この資格に月5,000円〜2万円程度の資格手当を支給する企業もあります。ただ、手当以上に大きいのは、労務トラブル対応や就業規則改定の中心を任され、管理職への登用につながる点です。人事部長クラスになれば年収800万円以上も視野に入ります。

大手企業や社労士法人へ転職する

同じ業務内容でも、企業規模によって給与水準は大きく異なります。中小企業で給与計算や社会保険手続きの実務を積んだあと、大手企業の人事部や規模の大きい社労士法人へ移ると、年収が100万円単位で上がることがあります。同資格は労務の知識を体系的に持っている証明として、転職市場でも評価されやすい資格です。

特定社労士の付記で業務範囲を広げる

特別研修を受けて紛争解決手続代理業務試験に合格すると、「特定社会保険労務士」の付記を受けられます。個別労働紛争のあっせん手続きで当事者の代理人になれるため、解雇や残業代をめぐるトラブル対応を業務に加えられます。単価の高い案件を受けられるようになり、開業後の差別化手段として有効です。

専門分野を絞って開業する

開業して高収入を得ている人の多くは、得意分野を明確にしています。たとえば医療機関・介護事業所専門、障害年金の請求代行専門、IT企業の人事制度設計専門といった絞り込み方です。「何でもできる社労士」よりも「この分野ならこの人」と認識されるほうが紹介が生まれやすく、顧問料の値下げ競争にも巻き込まれにくくなります。

合格者の体験談|資格取得で年収はどう変わったか

office worker reviewing payroll documents

食品メーカーの総務部で給与計算を6年担当していた森田さん(33歳)は、受験を決めた時点で年収420万円でした。社会保険の手続きは日常業務でこなしていたものの、法改正のたびに顧問社労士へ確認する立場に物足りなさを感じていたといいます。通信講座のテキストと過去問10年分を軸に、平日は朝の1時間半、休日は4時間を勉強にあてました。

1回目の本試験は、択一式の総得点が合格基準に1点届かず不合格でした。「選択式の足切りは免れたぶん、悔しさが大きかった」と森田さんは振り返ります。2年目は苦手だった年金科目の過去問を3周し、通算1年8ヶ月・約950時間の学習で合格しました。本試験の得点は選択式29点、択一式51点です。

合格後は2年以上の実務経験があったため、事務指定講習を受けずに勤務社労士として登録し、社内の人事部労務課へ異動しました。資格手当の月1万円に加え、就業規則改定のプロジェクトを任されて主任に昇格しています。2年後の年収は520万円となり、受験前から100万円上がりました。「手当そのものより、任される仕事の幅が変わったことが大きい」というのが森田さんの実感です。

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社労士は年収面で割に合う資格か

社労士試験の合格率は近年5〜7%台で推移しており(社会保険労務士試験オフィシャルサイト公表)、合格までの勉強時間は800〜1,000時間が目安です。通信講座の受講料は5万〜20万円程度で、合格後の登録には登録免許税と登録手数料で計6万円かかります。都道府県社労士会の入会金や年会費を含めると、登録初年度の費用は20万〜30万円前後になるのが一般的です。

講座費用と登録費用を合わせて30万〜50万円とすると、月1万円の資格手当だけでも2年半〜4年ほどで回収できる計算です。ただ、資格を取っただけで年収が自動的に上がるわけではありません。人事・労務の実務経験と組み合わせたときに評価が大きく伸びる資格なので、現職で労務に関わっている人ほど費用対効果は高くなります。

合格までの学習計画は社労士の独学勉強法と年間スケジュールで、講座選びは社労士通信講座の比較記事で詳しく解説しています。働きながら合格を目指す人は、自分の生活リズムに合う学習スタイルから選ぶと挫折しにくくなります。

社労士の年収に関するよくある質問

社労士の資格だけで年収1,000万円は狙える?

企業勤めで年収1,000万円に届くのは、大手企業の人事部門管理職など一部に限られます。実態調査でも900万円以上は勤務等の16.5%でした。開業なら顧問先30社以上を抱えて到達する例がありますが、営業力と専門分野の確立が前提になります。資格はスタートラインであり、1,000万円は実務と組み合わせた結果として届く水準です。

未経験から社労士になると年収は下がる?

人事・労務の実務経験がない状態で社労士事務所に転職すると、初年度は年収300万円台からのスタートになることが多いです。前職の年収によっては一時的に下がる可能性があります。ただし事務所で2〜3年、手続き業務と顧問先対応を経験すれば、企業の人事部への転職や独立など選択肢が広がり、そこから年収を伸ばしやすくなります。

40代・50代から取得しても年収は上がる?

この資格は年齢による不利が比較的小さい資格です。開業すれば定年がなく、企業での人事経験が長い人ほど顧問先からの信頼を得やすい傾向があります。40代以降の合格者が、定年後のセカンドキャリアとして開業を見据えるケースも多く見られます。勤務先での昇進が頭打ちでも、独立という別の道で収入を確保できる点はこの資格の強みです。

まとめ

社労士の年収は、勤務か開業かで大きく変わります。勤務の場合は300万〜600万円台が最も多い一方、600万円以上も4割を超えています。開業の場合は売上の中央値が500万円台で、顧問先の数と単価しだいで年収1,000万円以上も目指せます。

年収を上げる鍵は、資格に実務経験と専門性を掛け合わせることです。現職で人事・労務に関わっているなら、まずは合格して社内でのポジションを高めるところから始めてみてください。独学か講座かで迷っている人は、社労士の独学合格率と難易度もあわせて確認すると、自分に合った勉強法を選びやすくなります。

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