「ITパスポートと基本情報技術者、名前は聞くけれど違いがよくわからない」。社内でDX研修の案内が届き、どちらかを取るよう勧められて戸惑っている方は多いはずです。どちらもIPA(情報処理推進機構)が実施する国家試験で、受験料も同じ7,500円ですが、求められる知識の深さははっきり異なります。
坂口さん(28歳)は食品メーカーの法人営業として働くなかで、取引先とのシステム導入の打ち合わせについていけず、ITの基礎を学ぼうと決めました。最初にITパスポートを約60時間の学習で取得し、総合評価点は785点でした。その半年後に基本情報技術者へ挑戦し、科目Bで一度不合格になりながらも2回目で合格しています。
※ここで紹介する坂口さんの体験は、複数の学習者の声をもとに構成した架空のケースです。
この記事では、2つの試験の違いを対象者・難易度・試験形式・勉強時間の4つの軸で比較します。以下、基本情報技術者は「基本情報」、ITパスポートは通称の「iパス」と略して表記します。iパス合格者が次の試験でつまずきやすいポイントや、どちらを先に受けるべきかの判断基準も、坂口さんの例を交えて紹介します。
基本情報技術者とITパスポートの違いを一覧で比較

両試験の主な違いを下の表にまとめました。数値はIPAが公表している試験要綱と、令和7年度(2025年度)の統計をもとにしています。最新の試験日程や出題範囲は、ITパスポート試験の公式サイトとIPAの基本情報技術者試験ページで確認してください。
| 項目 | ITパスポート | 基本情報技術者 |
|---|---|---|
| 対象者 | ITを利用するすべての社会人・学生 | ITエンジニアを目指す人・若手エンジニア |
| 試験レベル | レベル1 | レベル2 |
| 試験時間 | 120分 | 科目A 90分+科目B 100分(計190分) |
| 出題数 | 100問(四肢択一) | 科目A 60問(四肢択一)+科目B 20問(多肢選択) |
| 合格基準 | 総合600点以上かつ3分野それぞれ300点以上(各1,000点満点) | 科目A・科目Bともに600点以上(各1,000点満点) |
| 合格率(令和7年度) | 48.6% | 38.3% |
| 受験料 | 7,500円(税込) | 7,500円(税込) |
| 受験方式 | CBT方式・通年実施 | CBT方式・通年実施 |
| 免除制度 | なし | 認定講座の修了試験合格で科目Aを1年間免除 |
| 有効期限 | なし | なし |
表を見ると、受験料や受験方式は共通している一方で、試験時間は70分長く、合格基準も2科目それぞれで満たす必要があるとわかります。iパスは分野別に300点を超えていれば総合点で補えますが、基本情報は科目Bで600点に届かないと、科目Aが満点近くても不合格です。この「穴が許されない構造」が、合格率以上に体感難易度の差を生んでいます。
対象者と出題範囲の違い
ITパスポートは「ITを使う側」の基礎知識を問う
iパスの出題は、ストラテジ系(経営・法務)が約35問、マネジメント系(プロジェクト管理など)が約20問です。残りの約45問がテクノロジ系(コンピュータ・ネットワーク・セキュリティ)という構成になっています。売上分析の手法や著作権法、個人情報保護法など、IT部門以外の社員でも日常業務で役立つ内容が3〜4割を占めます。「エンジニアになるため」ではなく「ITを使いこなす社会人になるため」の試験と考えるとわかりやすいでしょう。
基本情報技術者は「ITを作る側」の入口に立つ試験
基本情報の科目Aは、iパスと同じ3分野から出題されますが、比重はテクノロジ系に大きく寄っています。2進数の計算、データベースの正規化、IPアドレスの計算など、仕組みを理解していないと解けない問題が中心です。科目Bは20問のうち16問がアルゴリズムとプログラミング、残り4問が情報セキュリティで、擬似言語で書かれたプログラムを読んで結果を答える形式です。
同じ用語でも問われる深さが違う
両試験の出題範囲は重なる部分が多く、「SQL」「公開鍵暗号」「稼働率」といった用語はどちらにも登場します。違いは問われ方で、iパスでは用語の意味を選べれば正解できる問題が大半です。基本情報では、同じ稼働率でも直列・並列を組み合わせたシステム全体の値を計算させるなど、一段深い理解が求められます。坂口さんも「iパスで覚えた用語が、計算問題の前提として出てくる感覚だった」と振り返っています。
難易度・合格率・勉強時間の違い
合格率の差は約10ポイントでも受験者層が違う
令和7年度の合格率はiパスが48.6%、基本情報が38.3%で、数字だけ見ると約10ポイントの差です(IPA公表の統計より)。ただし基本情報の受験者には情報系の学生や現役エンジニアが多く含まれ、知識のある層が受けたうえでの38.3%です。IT未経験者に限れば、両者の難易度の違いは数字以上に大きいと考えたほうが安全です。
基本情報の合格率は令和5年度47.1%、令和6年度41.8%と、2年連続で下がっています。推移の背景は基本情報技術者の難易度と合格率の解説記事で詳しくまとめています。
勉強時間の目安はIT経験の有無で大きく変わる
資格スクールの案内や合格者の体験談で示される目安を整理すると、必要な勉強時間はおおよそ次の範囲に収まります。
- iパス:IT未経験者で100〜180時間、IT業務の経験者なら20〜50時間
- 基本情報:IT未経験者で約200時間、iパス合格者で100〜150時間、エンジニア経験者で50時間前後
坂口さんはiパスに約60時間、基本情報に約180時間をかけました。最初の試験で用語の土台ができていたため、科目Aは過去問演習中心で仕上がったそうです。一方で科目Bは新しく学ぶ内容が多く、180時間のうち半分以上をアルゴリズムの練習に使っています。使った教材は『キタミ式イラストIT塾 基本情報技術者』と、無料で使える過去問道場の2つでした。
あわせて読みたい基本情報技術者の難易度と合格率|2年連続低下の理由を解説基本情報技術者の最新の合格率と、近年難易度が上がっている理由を詳しく解説しています
試験形式と受験日程の違い
どちらもCBT方式で、受験日を自分で選べる
iパスは2011年からCBT方式で実施されており、全国のテストセンターでほぼ毎日受験できます。基本情報も2020年度にCBT方式を導入し、2023年4月からは通年で受験できるようになりました。以前のような春・秋の年2回試験ではないため、学習の進み具合に合わせて受験日を決められます。
基本情報には再受験までの待機期間がある
基本情報で不合格だった場合、再受験できるのは前回受験日の翌日から起算して30日を超えた日以降です。科目Aと科目Bは同じ日にまとめて受けるため、再受験では両方を受け直します。坂口さんは1回目の科目Bが540点で不合格となり、ちょうど31日後に再受験して655点で合格しました。待機期間を前提に、受験日は余裕を持って予約しておくと焦らずに済みます。
科目A免除制度は基本情報だけ
基本情報には、IPAが認定した講座を修了し、修了試験に合格すると科目Aが1年間免除される制度があります。免除を使えば本試験は科目Bだけに集中できるため、通信講座の受講を検討している人には大きなメリットです。iパスには免除制度がなく、全員が同じ100問を解きます。講座選びは基本情報技術者の通信講座比較を参考にしてください。
iパス合格者が基本情報でつまずく3つのギャップ

「iパスを取ってから基本情報へ」という順番はよく勧められますが、2つの試験の間には見落とされがちな段差があります。ここでは、iパス合格者が次の試験に進んだときに戸惑いやすい点を3つ挙げます。どれも事前に知っておけば対策できるものばかりです。
ギャップ1:用語暗記から「計算して答える」問題へ
iパスでは用語と意味の対応を覚えれば解ける問題が多く、坂口さんも一問一答アプリで点数を伸ばしました。基本情報の科目Aでは、基数変換、浮動小数点、稼働率、平均待ち時間などの計算問題が毎回のように出ます。用語集を眺めるだけでは対応できないため、紙とペンで途中式を書きながら過去問を解く練習に切り替える必要があります。
ギャップ2:擬似言語のトレースはまったく新しいスキル
最大の壁は科目Bの擬似言語です。変数や配列の値が1行ごとにどう変わるかを追う「トレース」は、iパスの範囲にはほとんど出てきません。坂口さんは1回目の受験でここを読み流してしまい、科目Bが540点にとどまりました。2回目までの1か月は、毎日2問ずつ変数の値を表に書き出しながら解く練習を続け、本番でも同じ方法で時間内に解き切れたそうです。具体的な練習法は科目B対策の記事で紹介しています。
ギャップ3:情報セキュリティは「知識」から「判断」へ
iパスのセキュリティ分野は、ウイルスの種類や暗号化方式の名称を選ぶ問題が中心です。基本情報の科目Bで出るセキュリティ4問は、社内で起きたインシデントの事例を読み、どの対策が適切かを判断させる形式になっています。用語を知っているだけでは選択肢を絞りきれないため、事例問題を数多く解き、「なぜその対策なのか」を説明できる状態を目指しましょう。
あわせて読みたい基本情報技術者の科目B対策|540点→735点の勉強法基本情報技術者の科目Bでスコアを伸ばすための具体的な勉強法を紹介しています
どっちを先に受ける?タイプ別の選び方
ITパスポートから始めたほうがよい人
IT業務の経験がまったくない人や、文系出身で数学に苦手意識がある人は、iパスから始めるのが無難です。基本情報の科目Aと出題範囲が重なるため、ここで覚えた用語はそのまま次の試験の土台になります。1〜2か月で合格という成功体験を得られる点も、長い学習を続けるうえで支えになります。学習の進め方はITパスポートの初心者向け勉強法にまとめています。
基本情報技術者に直接挑戦してよい人
情報系の学部に在籍している学生や、すでに開発・インフラの業務に就いている人は、iパスを飛ばして基本情報から受けても問題ありません。どちらの試験にも受験資格はないため、順番は自由に決められます。プログラミング経験が少しでもあれば科目Bの擬似言語にも慣れやすく、入門試験に使う時間を本命の対策に回したほうが効率的です。
情報セキュリティマネジメント試験という選択肢
迷ったときの第3の選択肢が、同じIPAの情報セキュリティマネジメント試験です。基本情報と同じレベル2に位置づけられながら、プログラミングは出題されず、社内の情報管理やリスク対応に焦点を当てています。総務・人事・営業など、エンジニア職には就かないもののセキュリティ担当を任される人には、業務に直結しやすい試験です。詳細はIPAの情報セキュリティマネジメント試験ページや独学勉強法の記事で確認できます。
両方取る価値はある?就職・転職での評価の違い

iパスは「ITの基礎を理解している社会人」の証明になり、IT企業以外でも評価の対象にする会社が増えています。とはいえ、IT企業の採用ではエンジニアとしての素養を示す資格とは見なされにくく、エンジニア志望なら基本情報が実質的なスタートラインです。IT企業では新入社員研修の目標資格に基本情報を指定し、資格手当や一時金を設けている例も少なくありません。
両方を持つ意味は、職種の幅を広げられる点にあります。坂口さんは基本情報の合格後、社内のDX推進プロジェクトに営業部門の代表として加わりました。会社の規定で月5,000円の資格手当もつき、「iパスだけのときより、社内での見られ方が変わった」と話しています。営業や企画職のままでも、エンジニアと同じ言葉で会話できる人材は社内で頼られる存在になります。
基本情報技術者とITパスポートの違いに関するよくある質問
ITパスポートを持っていないと基本情報技術者は受けられませんか?
受けられます。基本情報に受験資格はなく、年齢・学歴・実務経験を問わず誰でも申し込めます。iパスの合格は条件ではないため、自分のIT知識に合わせて最初から基本情報を選んでも構いません。ただしIT未経験の場合は約200時間の学習が必要になるため、3〜4か月の計画を立ててから申し込むと安心です。
基本情報に合格したらiパスは不要ですか?
知識の範囲で見れば、基本情報はiパスの内容をほぼ含んでいます。そのため、上位の試験に合格した後で入門レベルの試験を取り直す必要はほとんどありません。すでに両方を持っている場合は履歴書に並べて書いて問題なく、段階的に学んできた姿勢を示す材料になります。
2つの試験を同時期に勉強してもよいですか?
可能ですが、IT未経験者にはおすすめしません。出題範囲が重なるとはいえ、科目Bは別の対策が必要で、2つを並行すると両方が中途半端になりやすいからです。iパスに合格してから1〜2か月以内に次の学習を始めると、覚えた用語を忘れないうちに次の段階へ進めます。
資格に有効期限はありますか?
どちらの資格にも有効期限や更新制度はなく、一度合格すれば生涯有効です。ただしIT分野の知識は数年で古くなるため、合格後もニュースや業務を通じて新しい技術に触れ続けることが、資格の価値を保つことにつながります。
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基本情報技術者とITパスポートの違いは、一言でいえば「ITを作る側の入口」か「ITを使う側の基礎」かという点にあります。受験料7,500円とCBT方式は共通ですが、試験時間・合格基準・科目Bの擬似言語によって、求められる学習量は2倍近く変わります。
- IT未経験・文系出身なら、iパスから始めて段階的に進む
- 情報系の学生やエンジニアなら、基本情報に直接挑戦する
- 非エンジニアでセキュリティを任されているなら、情報セキュリティマネジメント試験も候補に入れる
どちらを選ぶにしても、最初の一歩は受験日を決めることです。CBT方式なら1〜2か月先の日程を今日のうちに押さえられるので、目標日から逆算して学習計画を立ててみてください。参考書選びに迷ったら、基本情報技術者の参考書おすすめも役立ちます。